North & South について投稿したブログです。2004年にオンエアされたこのドラマに、2021年どっぷりハマりました。出会えて幸せでした。
英BBCドラマ「North & South」
→本編のあらすじ
→創作(二人が列車に乗ったあとから)
ドラマの原作であるエリザベス・ギャスケルの小説「North and South」
→小説の初対面シーン
→小説のラストシーン
マーガレットとジョンのその後が知りたい
起
1871年6月
ミルトン駅に一人の労働者が降り立つ。トム・ヒギンズ。いつも本を音読していた痩せた少年は、25歳の青年になっていた。13歳で奉公のために故郷を離れてから10数年ぶりの帰郷である。
トムは養父ニコラスと一緒に住み始める。ニコラスは数年前に引退し、子供達(実子や養子)はそれぞれ家庭をもっている。トムの姉メアリと妹のスザンナ(バウチャーの娘)はマルボロ・ミルのキッチンで働いている。スザンナは最近結婚し、その夫もマルボロ・ミルに職を得た。
トムもマルボロ・ミルで働き始める。経営者のジョン・ソーントンは多くの工場をもち、その地域の紡績産業をリードしている。ソーントン夫妻とその三人の子供は 工場とは離れた家に住み、今はジョンの母ハンナだけが工場の隣に住んでいた。ジョンの妻マーガレットはトムが戻ってきたことを心から喜ぶ。ジョンは、合成染料の知識を持ちマシーンの修理などもこなすトムに目を掛ける。
1871年7月
夫妻の第2子ハリー(17)が、夏期休暇でロンドンから帰省する。ハリーとトムは意気投合し、ハンナの家の階下で(トムの休憩時間に)チェスをするようになる。労働者ながらトムにはチェスの知識があった。(奉公先の息子の相手をさせられた経験があったからだ。)
しばらくすると夫妻の第1子ローズ(18)もゲームを観戦するようになる。トムはローズに再会した瞬間に恋に落ちる。チェスゲームは当初ローズ達が道で拾った石やワインのコルク栓などを駒に見立てて行われた。やがて、ハンナが孫のためにチェスセットを買い、体裁が整う。
1871年9月
ハリーはトムに、将来の夢を打ち明ける。測量学を学びたいという。「紡績工場を継ぐよりも、地球を計り、地図を作りたい。そして、世界共通の経線と緯線で、地球の全ての点を表現するんだ。チェス盤に書かれた縦と横の線のように」
ハリーがロンドンの学校に帰る日。トムは汽車を見送るために草原に向かう。途中でローズに会い、旅立つハリーに二人で手を振る。帰り道、「あなたは、私たちにとって家族みたいなもの」といわれたトムは、ローズのことで頭がいっぱいになる。
ニコラス・ヒギンズは亡くなり、愛娘ベシーの傍らに埋葬される。マーガレットはトムから、都会に奉公に出た妹のひとり(バウチャーの娘)が、fallen woman(売春婦)になっているという告白を聞き、自分の無力さを実感する。
承
1871年10月
トムとローズはチェスを続けていた。夫妻の第3子アンドリュー(7)も遊びに来るようになる。チェスを通してローズと話すようになったトムは、ますますローズに思いを募らせる。
ある日トムはローズに想いを告白する。驚いたローズは拒否し、逃げるように部屋を出て行く。その日から、どちらもチェスの部屋に来なくなる。
1871年11月
ハンナが体調を崩しマーガレットは懸命に看病する。ハンナは言う。「感謝しているわ。あなたと家族になれたこと」。ジョンと最後の時を過ごし、ハンナは亡くなる。娘ファニーは間に合わなかった。(夫ワトソンは数年前にハイリスクな投機に失敗し、経済破綻していた。)
ハンナの葬式のためミルトンに戻ったハリーは、トムと姉ローズがお互いを避けていることに気がつく。マーガレットは、トムとのことを娘から聞く。「トムが嫌いなわけではない。ただ、告白はあまりに突然で、自分は逃げ出すことしかできなかった。彼の真剣さに答える準備が全くできていなかったから」。娘の言葉を聞き、昔の自分を思い出すマーガレット。
1872年2月
ローズはロンドンのイージス宅に滞在する。いとこのショトウ達がチェスをするのをみて、ミルトンを思う。川が異臭を放ち、労働者があふれかえるロンドン。それでも社交やファッションにしか関心を持たない館の人たちに違和感を持つ。そしてトムの誠実さを愛おしく思う。
ミルトンのトムの元へ、売春婦となって行き場を失った妹が身を寄せる。マーガレットは彼女を支えようとするが、周囲の軽蔑の眼差しに耐えきれなくなった妹は自殺してしまう。
転
1872年5月
ジョンは監督係から、工場内で何者かが物を盗んでいる、トムが怪しい、という報告を受ける。一蹴するジョン。しかし周囲の人たちはトムを白い目で見るようになる。また、高価なチェスの駒がいつのまにか無くなっていることも判明する。やっぱりあいつだ、という空気が更に広がる。
横流しの現場にトムがいた、という証拠が出て、ジョンはトムを問い詰める。嫌疑を否定しないトム。ジョンはトムを解雇すると告げ、罵倒する。「お前が今立っている場所に、20年前誰が立っていたと思う?ニコラス・ヒギンズだ。あいつは私に頭を下げた。お前を養うために仕事をください、と。それなのに、お前は何をした?ここから出て行け!」
マーガレットのもとに、トムの妹スザンナが泣きながらやってくる。盗みをしたのは自分の夫であって、兄ではないと告げる。また、チェスの駒を持っていたのはアンドリューであることも判明する。「ぼくだってお兄ちゃんが持っている物がほしかった」と泣きながら謝る。
ジョンとマーガレットは、トムの家に行き、なぜ疑惑を否定しなかったのかと聞く。「せめてスザンナには 幸せになって欲しかった。」そして、駒について言う。「俺は、チェスの駒は盗んでいません。だけど、あの部屋から持ってきてしまった物がある。これです」。それは以前ローズが拾い、ナイト(チェス駒)として使っていた石だった。
1872年7月
ハリーとローズがミルトンに戻ってくる。ハリーは、トムが工場を辞めたことを知ると、トムがどれほど自分を励ましてくれたかをジョンとマーガレットに訴える。そして「僕は将来、測量学をやりたい。」と宣言する。ジョンとハリーは言い争うが、標準地図や標準時間の必要性を実感していたジョンは、息子の希望に理解を示すようになっていく。
トムは、友人のミシン工場の経営を手伝うために、ミルトンを離れる決意をする。
ニコラスの墓の前でジョンは、トムに問う。「私はマーガレットと結婚できなければ一生独身のつもりだった。お前に、ローズでなければ一生結婚しない、と言い切る覚悟があるか」
トムは答えない。「ある、と返事をしたら? ない、と返事をしたら? 今あなたの質問に答えても何も変わりません。」「マスター、あなたを心から尊敬しています。でも、次に会うときは対等なビジネスパートナーでありたい。」「見ていてください。『歩(pawn)』がどんな風に進化するか」
自分が拾った石をトムがいまでも大切にしていることを知ったローズは、トムへの気持ちを母マーガレットに告げる。マーガレットは、20年近く前に起きた自分とジョンの再会、そしてローズという名に込めた思いを話す。「あなたとトムの気持ちが変わらなければ、いつか『その時』が必ず来る」といって娘を抱きしめる。
数日後、トムは北行きの汽車に乗る。草原にさしかかったとき、ハリーが上着を振っているのが見える。そして その隣に立つローズが手で顔を覆う姿が 遠ざかっていく。
(おわり)
Mrs.ギャスケル、約束は果たしましたよ!